月の記録 第32話


「はぁ・・・疲れた」

スザクはぐったりとベッドに突っ伏した。
まだペンドラゴンに戻れたわけではないが、ルルーシュと別室(前回、前々回も寝室は別だが)という環境に心の底から感謝した。護衛だからジノと交代で警備にあたったり見回りしたりはするが、付きっきりでという状況からはひとまず脱した。
ルルーシュと一緒にいるのが嫌なわけではない、むしろ嬉しい。ただ、付きっきりでずっとそばにいたいけど、いろいろと思う所があり、こうして息抜きできる時間がものすごく欲しくなるだけなのだ。
ルルーシュの騎士としてアリエスにいた頃よりも疲れているのは、長時間共にいるのが久しぶりだからだろうか、それとも、今まで見ることの叶わなかった彼の本質に触れてしまったからだろうか。

不愉快そうに眉をしかめ、いつも誰かを睨みつけ、暴言を吐いているというイメージの強かったルルーシュが、始終機嫌よく過ごし、しかも料理までふるまったのだ。この7年で見たことのない光景。
それを作りだしたのがこの館の主・魔女C.C.だというのは悔しいが・・・嬉しい。
やはりルルーシュは、傍若無人な暴君でも無能でもないのだ。 あれだけの料理を迷うことなく作れたのだから、きっと人知れず料理の練習もしていたに違いない。ならば、きっと他の面も表に出していないだけなのかもしれない。
皇宮はきらびやかなイメージが強く、庶民にとってはあこがれの世界共されているが、実際はドロドロとした人間関係と皇位継承権をめぐる争いで、いつ命を狙われるか解らないような場所だ。強い後ろ盾がなければ、出る杭は打たれてしまう。そんな場所で生き抜くために、無能を演じるているのだ。

「ルルーシュ、僕が必ず」

その才能を発揮できる環境を整えて見せる。
そしていつか君の騎士に。




「何故出立の準備をしているんだ?」

寝ぼけ眼をこすりながら部屋から出てきたC.C.は、いつでも発てるように準備をしているルルーシュ達の姿を見て、眉を寄せた。

「お前、本気で俺にあと2日給仕をさせるつもりだったのか?」
「いいじゃないか、たまには皇子から小間使いになっても、短い人生いろいろ経験しておくものだぞ」
「十分経験した。お前も準備を進めろ、魔女」
「相変わらず勝手な男だな。二日後といったら、二日後だ。私は二度寝する」

お前たちの都合では動いてやらんと、C.C.は部屋に戻ろうとしたのだが。

「・・・そう言えば、お前の好きなピザ屋が、期間限定イベントをしていたはずだ。確か、今日までの企画だったと記憶している」
「・・・まさか、ピザ○ットの話か?」
「ああ。4日間限定イベントで、期間中に注文すれば、黄色い物体の文房具セットを貰えるはずだ」
「チーズ君の文房具セットだと!?」
「ノートに定規、消しゴムとカラーペンセットじゃなかったか?」

ルルーシュは傍に控えていたメイドに声をかけると、メイドは心得ておりますと言いたげに、ポケットから一枚のチラシを取りだした。C.C.は奪う様にそれを手にし、まじまじと見つめた。

「・・・私は知らないぞ、こんな情報」
「皇宮近くの店の1周年記念イベントだから、お前が知らないのは当然だ」
「皇宮近くに去年?おまえまさか・・・まあいい、急がなければ間に合わないじゃないか!」
「今から予約をして配達の最終時間に届けさせればいいだろう」

今から急いで戻っても、どのみち店の閉店時間に間に合わない。
冷めてしまうが、時間指定をして出来るだけ遅くに届けてもらえばいい。
それで確実に限定グッズは入手できる。

「その手があったか!ルルーシュ、電話を貸せ!」
「俺のでかける気か?」
「私の携帯は部屋だ。急がなければチーズ君の文房具が無くなってしまう」
「部屋にいけばいいだろう。俺の番号をピザ屋に残すつもりはない」
「融通の利かない男だな、おい、枢木スザク。お前の携帯を貸せ」

ルルーシュの傍に控えていたスザクに、白羽の矢が立った。

「え、自分のですか!?」
「お前以外に枢木スザクがいるのか?いいから貸せ!」
「ですが自分の携帯は・・・」

ナイトオブラウンズの携帯。
そう簡単に貸すわけにはいかないし、何よりデリバリーに使われるのは・・・と、出し渋るスザクに、C.C.はいいから早くしろとせっつきながら、交渉を始めた。もちろん、ルルーシュには聞こえないようにだ。

「後でお前の欲しそうな写真をくれてやる」
「自分が欲しそうな写真、ですか?」

この魔女とは昨日会ったばかりだし、話をするのも今が初めてと言っていい。そんな相手が何を知っているというのだろう。

「私は魔女だ。お前の欲しいものぐらい解っている。まあ、シャルルもこのぐらいなら文句は言わないだろう」
「・・・今回だけですよ」

どんな写真をくれるのか気になるし、皇帝陛下の事を呼び捨てにできるC.C.の立ち位置が解らない以上、今は逆らわない方がいいだろう。差し出された携帯を手にすると、C.C.はチラシに書かれている番号に早速電話をし、予約を入れた。皇宮内のアリエスにという内容に相手はかなり驚いたようだが、信用出来ないならこの電話番号を宮殿に問い合わせろと言うと、一応予約は受けてくれたらしい。
その後スザクの携帯に転送されてきた写真は、恐らく昨夜のものだろう、ルルーシュがベッドで無防備に眠っている姿だった。

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